なか仙寄席通信第19号

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この夏、すい臓にたまった石と胆嚢を取り除く手術のため一カ月半ほど入院しておりました。原因は酒の飲み過ぎ。皆様も飲み過ぎには十分お気をつけください。
それにしても今夏の暑さは異常でしたね。わたしの入院した病院はけっこう古く、待合室や外来はクーラーが効いているのに、肝心の病棟には冷房がなかったのです。そのため一日中窓を開けておりましたが、六人部屋のそれぞれのベッドがカーテンで覆われていたので風が通らず、早朝から汗だく。朝の回診で先生が「調子どうですか」とカーテンを開けるとちょっと涼しくなるので、回診の足音が近づくと思わず正座してこちらからカーテンを開け、「鞍馬から牛若丸が出ましてその名を九郎判官……」と言いそうになりましたよ。『青菜』の女房か俺は。

さて、本日の枝光師匠の演目はその『青菜』に加えて十八番中の十八番である『立ち切れ線香』。たぶん二年ぶりくらいの高座ですので、その見所などをおさらいしておきましょう(と言っても次の一文は『上方落語家名鑑【第二版】』からの丸写しです。すみません、病み上がりなもんで……)。

▼船場大店の若旦那が、百日の蔵住まいをすることになる。芸妓・小糸に一目惚れし、連日茶屋通いをしたための謹慎だったが、その間、番頭の元に小糸から毎日、手紙は届く。しかし、八十日でぷっつり途絶えて…。▼屈指の大ネタで、浪花情緒にあふれた名品。笑福亭の祖とされる幕末の松冨久亭松竹の作と言われる。船場の若旦那と芸妓小糸との悲恋物語は笑いこそ少ないが、諫める番頭や娘の思いを代弁するお内儀の立場と情入り交じる複雑な描写など、全編聞きどころ。若旦那の悲痛と地唄の「雪」との連動は、上方落語の醍醐味だ。

久しぶりの枝光師匠の『立ち切れ線香』は、はたしてどんな進化を遂げているのか。本日一番の注目です。
なお、次回のなか仙寄席は十月九日(土)。ここでも枝光師匠、ハメモノ入りの大ネタ二連発です。ネタ下ろしになる『不動坊』と昨年からやり始めた『質屋蔵』。北海道で生で聞ける機会はほとんどないこれらの噺を座布団に座ってじっくり聞ける幸せを、次回もなか仙で分かち合いましょう。

(土肥寿郎/「なか仙寄席」世話人)